年貢を納めたいジャニーズ

ここで言う「年貢を納める」とは「諦める」とか「観念する」のような慣用的な用法ではなく、文字通り「汗水流して作った農作物を献上する」方の意味です。

 

デビュー組の担当をしていたときは、アイドルとファンは「供給者」と「消費者」の関係だと思っていました。

しかしJr.に降りて、アイドルは「王子様」だと思うようになりました。

  

アイドルが王子様ならファンは何なのか。

お姫様……な訳ない(※個人の感想です。そう思いたい方はご自由にどうぞ)。

見守る王妃? お仕えする従者? いやいや、ほぼ一生お目通りも叶わない農民が妥当です。国の祝日とかにお城のバルコニーに出てお手振りする王子を遠くから眺めるくらいの距離感。実際にそんな感じだし。

この王国にはたくさんの王子がいて、たくさんの楽しいお祭りがあって、お祭りに参加するにはお金がかかるけど、参加できなくても手数料という謎の特別税を徴収されることがあります。王様による国務を任せる王子の選考基準も不透明です。なんかおかしいって思うこともたくさんあるけれど、国民は国の繁栄と王子の健やかな成長のためにせっせと年貢を納めたり労役に就きます。嫌なら国を離れることも自由なのです。

 

「担当とは」というジャニオタ永遠の命題の一つの解答として、「いちばんお金を使う対象」というのがあります。客観的で分かりやすい指標だと思います。

 

デビュー組の担当だったときは、私はできるだけ自担にお金を使うまいと思っていました。

雑誌に掲載される機会は多いので、単独表紙とかよほどのことがないと買わないことにしていました。CDはどうしても見たい特典映像がない限り複数買いはしません。グッズはうちわくらいしか個人のものは買いません(うちわは観光地のペナントのようなものだと思っているのでご来場の記念に)。

コンサートの東京公演が当たらなければ遠征することもありますが、交通費や宿泊代は自担に払うものではありません。

もちろん物質的な所有欲を刺激するCDや雑誌やグッズは買いますし、コンサートや舞台のチケットが手に入れられれば観に行きます。また、テレビやラジオを視聴する時間を惜しいとは思いません。充分な対価が得られると判断ができるものに対するお金や時間の消費は納得します。

一方、私がCDを1、2枚買うか買わないかでオリコンの順位が変わるわけじゃないし、数百円のグッズや写真の売り上げから本人に入る金額など微々たるものです。自分が頑張ったところで本人に響かないことで努力してもなあと思っていました。納得できないことまで「自担のためだから」と無理して続けているとそのうち疲弊して、支出に見合う対価は得られないという虚無感を抱え、収納を圧迫するファン以外にとっては無価値なガラクタに囲まれた余生を送ることになります。

それでも実際に計算したらそこそこの額には達すると思いますが、事務所とレコード会社の思惑に屈せず、「出たものは全部買う」ということはしないのが自分なりのルールでした。

 

しかしその対象がデビュー前のJr.の場合、写真の売上枚数、雑誌のアンケートなどが直接本人の評価に影響します。(一部を除いて)ファンの母体数が少ないので、1票の重みが違う。自担のためなら公式写真は同じものでも何枚も買うし、1ページに複数人で載っているような雑誌でも買ってアンケートを出します。何ならアンケートのために自担の載っていない雑誌を買いさえします。

推される人はもう決まっていて、そう簡単に覆らないことも分かっていますが、「お金を出す」ことが「応援する」ことに直結しているので、無駄なことだとは思いません。

 

写真を買う(年貢)、雑誌を買う(年貢)、アンケートや投票を出す(開墾)、SNSに書く(開墾)、ダブった写真を知人に配る(侵略)……支持している王子のためにできる限りのことをしながら、その努力を知られることなく死んでいくのが小作人の運命なのです。

 

……小作人なりにできることはしているつもりなので、そろそろお姿を見せてくれませんかね?